こんにちは、不動前ステーション歯科・矯正歯科の小林です(^^)
前回は、矯正治療中の歯の動きについてお話しました。
今回は矯正治療が終わったあとの『保定』についてのお話です。
矯正歯科治療は「後戻り」というリスクを背負っており、後戻りの防止=保定は非常に重要な処置です。
目的の位置に移動させた歯や顎骨をその位置と状態で長期間保持し、安定できる条件を整える処置になります。
<保定の種類>
①自然的保定
自然的保定とは、矯正治療で得られた正常な状態を装置を使わずに保持することをいいます。
つまり歯の咬み合わせや歯相互の隣接面接触、あるいは口腔周囲筋の作用と咀嚼筋の機能など自然の力によって歯列や咬合を保全することです。
(1)口腔周囲筋
歯列を正常に維持するためには、口腔周囲筋の機能力すなわち外側からのバクシネーターメカニズム(頬筋機能機構)と内側からの舌側作用との力の均衡がとれている必要があります。
(2)咀嚼筋
正常な咬頭嵌合位(歯が咬み合う位置)は歯列の維持に大切です。
また下顎安静位での咀嚼筋は弛緩し、上下歯列の間には一般に1~3㎜の安静空隙があります。
このように歯列には口腔周囲筋や咀嚼筋などの機能力や萌出力が三次元的に作用しており、歯列全体を正常に保持するためにはこれらの力の均衡がとれている必要があります。
この力を咬合保全力といいます。
②器械的保定
器械的保定は、矯正治療後に移動させた歯および顎骨が、新たな環境に適応し、新しいバランスが確立するまでの期間、保定装置を使って咬合を維持することをいいます。
保定装置には可撤式(取り外し可能)のものと固定式のものとがあります。
③永久保定
長期にわたって器械的保定を行っても後戻りが心配されるようなとき、矯正治療後に補綴装置で永久的に固定することをいいます。
<後戻りの要因>
矯正歯科治療によって得られた正常な歯列、咬合、顎関係などが治療前の状態の方向に後戻りする現象を「再発(リラップス)」といいます。
苦労して治療を行っても、それが後戻りするようでは無意味な結果になってしまいます。
保定が成功せず、再発してしまう要因として次のような点が挙げられます。
- 保定装置の装着に対する患者の協力が十分に得られなかった場合
- 保定期間が不十分であった場合
- 患者に対する保定方法が不適当であった場合
- 不正咬合の原因が除去されていなかった場合
- 咬合の調整が不十分であった場合
- 診断を誤った場合
<保定装置>
保定装置には可撤式(取り外し可能)のものと固定式のものがあります。
可撤式の保定装置にはホーレータイプリテーナーやラップアラウンドリテーナーなどがあります。
固定式の物には犬歯間固定式保定装置などがあります。
いずれの装置を用いるかは、患者さんの協力度や症状によって先生が判断します。