予防歯科とは
予防歯科とは、虫歯や歯周病になる前の予防を大切にすることです。
虫歯は大きくなって治療に時間がかかってしまうよりも、虫歯にならないように予防のほうが遥かに簡単です。
お口の健康を守るために、歯科での定期的な検診(プロフェッショナルケア)と、歯科医や歯科衛生士の指導に基づいた、毎日のセルフケアを両立することで正しい予防歯科をはじめましょう。
予防歯科には、大きなポイントが4つあります。
1. ホームケアとプロフェッショナルケアを大切に
ホームケアとは、家で毎日お口の中をしっかりとケアをすることです。
歯磨き、デンタルフロスや糸ようじ、歯磨き粉、デンタルリンスなどを使い分けてケアします。
プロケア(プロフェッショナルケア)は定期的に歯科医院で行うケアのことで、歯石取りや、歯磨き指導などがあります。
ホームケアもプロケアも非常に大切です。
2. フッ素
フッ素は歯を作るためには欠かせない成分で、歯を守るためにも非常に大切な成分です。
歯質を強くするため、虫歯の予防にも高い効果を発揮します。
- フッ素の働きについて
- ・歯から溶け出したカルシウムやリンを補い再石灰化を促します。
・歯面のエナメル質を酸に溶けにくい性質にします。
・虫歯の原因となる細菌の働きを強めて、酸が作られるのを抑えます。
- フッ素をなるべくお口の中に残すことが大切です
- 歯磨き粉に含まれているフッ素は、歯磨き後も口の中に残り少しづつ作用します。
毎日食べたり飲んだりすることで、虫歯の原因は作られます。
虫歯を予防するためにも、常にフッ素を口の中にある状態にすることが大切です。
口の中にフッ素を残すためには
・高濃度フッ素の歯磨き粉を使う(チェックアップスタンダードがおすすめです)
・歯磨き粉は、歯ブラシに1.5センチ程度つける
・3分以上歯を磨く
・ブラッシング後は、軽く吐き出して、すすぎは一回だけ
の四つを意識することが大事です。
- プロケアでは高濃度フッ素を塗ることができます
- 歯医者では市販の歯磨き粉では使えない高濃度のフッ素を散布することができます。
市販の歯磨き粉のフッ素含有量は1450ppmが限界ですが、歯医者なら9000ppmのフッ素を歯に塗布することができます。
3~6ヶ月に一度のフッ素塗布を、当院ではおすすめしております。
3. 歯垢(プラーク)の除去
歯垢とは歯に付着した細菌の塊で、何百億もの細菌がいると言われております。 歯垢は虫歯や口臭、歯周病などの原因にもなります。
- 歯垢除去のポイント
- 歯垢はネバネバとしており粘着性が高いので、うがいをしただけでは取り除くことができません。
特に、歯と歯の間や奥歯の噛みあわせの部分などは、歯ブラシの毛先があてにくく汚れが溜まりやすいため重点的に磨くことが大事です。
- 適した歯ブラシ選びが大切
- 歯垢を除去しやすい歯ブラシを選びましょう。
・歯ブラシのヘッドが、歯2本分くらいの大きさのものを選ぶ
・健康的な歯茎なら「ふつう」。磨いていて出血するようなら「柔らかめ」にする。
・歯ブラシの柄は握りやすいものを選ぶ
この三点を考えて歯ブラシを選びましょう。
当院では歯磨きの方法と歯ブラシの選び方をアドバイスしています。
- デンタルフロスは必須
- 歯と歯の間に付着した歯垢は、歯ブラシだけでは落としきれません。
デンタルフロスや歯間ブラシを利用することで、歯垢の除去率は約30%もアップします。
- クリーニングは歯医者で定期的に
- お口のケアは、ホームケアだけだと完全に行うことはできません。
定期的に歯医者でクリーニングをすることが非常に大切です。
4. 細菌を増やさない
口の中には、約300種類以上の細菌います。
お口の中の細菌が増えると、歯垢が生成され虫歯や歯周病になりやすく、全身の病気に関係しているという研究結果もあります。
また、歯周病菌が原因で起こる病気は様々で、早産や低体重児出産・誤嚥性肺炎・心筋炎・動脈硬化・糖尿病・皮膚炎・リウマチ性関節炎・骨粗鬆症などがあります。
一方で、お口の中の細菌を少ない状態に保つことができれば、口臭予防や、風邪・インフルエンザの予防にもつながります。
そのため、なるべくお口の中は細菌を増やさないよう清潔にすることが大事です。
- 就寝前のケアが大切
- 就寝中は唾液の分泌が減りますので、お口の中の細菌も増えやすくなります。
そのため、寝る前のケアが非常に大切です。
歯磨きの他にデンタルリンスを併用することで、細菌の繁殖を大幅に抑えることができます。
- 毎日のホームケアで細菌の繁殖を抑えましょう
- 毎日の丁寧な歯磨きで、お口の中にいる細菌の繁殖を抑えることができます。
毎日欠かさずホームケアをすることがとても大切です。
当院のプロフェッショナルケア
PMTC
PMTCとは
P=Professional=歯科医師・歯科衛生士
M=Mechanical=機械的
T=tooth=歯
C=Cleaning=清掃
の略です。
簡単にいえば、歯科医院で歯科医師や歯科衛生士が、専門的に歯をクリーニングしてくれるということになります。
ご自身でのケアと違い、様々な器具を使用し、フッ素入りのペーストを使った本格的な歯の掃除を行います。
PMTCは、歯ブラシでは落としきれない汚れを、ほぼ完璧に除去することができるので、虫歯を予防する効果が高いです。
PMTCはなぜ必要なのか?
それは、PMTCをすることによって、虫歯や歯周病を劇的に減らし予防することができるからです。
歯周病は、歯がグラグラして食べ物が噛みにくくなるという症状以外にも、様々な病気を引き起こす原因につながります。
- 動脈硬化・狭心症・心筋梗塞・脳梗塞
- 動脈硬化や心筋梗塞を発症する原因に、不適切な食事や運動不足、ストレスなどがあげられますが、その他の原因として、歯周病菌がそれらの病気に関係し、引き起こすことがわかってきました。
歯周病菌が血液内に入ると、血管を刺激し、動脈硬化を引き起こす物質がでて、血管壁が狭くなってしまうのです。
また、歯周病の人は、歯周病じゃない人に比べて、2.8倍も脳梗塞になりやすいという研究結果も発表されています。
動脈硬化にならないようにメタボリックシンドロームの方は、歯周病予防のためのPMTCはより重要となります。
- 糖尿病
- 歯周病は糖尿病の合併症の一つです。
最近の研究では、歯周病になると糖尿病が悪化してしまうという証明もされています。
また歯周病と糖尿病は、お互いに悪い影響を与えてあっているだけでなく、反対に、歯周病が治ると糖尿病も改善するということがわかってきています。
- 血糖値が上昇する
- 歯周病になると歯周病菌が血液内に入ります。
歯周病菌自体は、血管内に侵入しても白血球の働きで死滅しますが、歯周病菌の死骸が毒素をもっており、血糖値を下げるホルモンであるインスリンの働きを邪魔してしまいます。
また、歯周病を治療し症状が改善すると、HbA1cの値(血糖値のコントロール値を示す)が改善することがわかっています。
- 早産・低体重児早産
- 歯周病に罹患している場合、早産及び低体重児の危険性が、歯周病じゃない妊婦さんに比べて7倍にも高くなる研究結果があります。
これは、飲酒や喫煙、高齢出産で生じる早産のリスクよりも、はるかに高い数値なのです。
歯周病菌が血液の中に入り、胎盤を通して直接感染するため、早産や低体重児の危険性が高くなると考えられています。
これから生まれてくる赤ちゃんのためにも、歯周病予防をしっかりと行うことが大切です。
- 肺炎
- 肺は、咳をすることによって、細菌などの異物が入らないようにしています。
しかし、高齢になってくるとその機能が低下し、口の中の細菌が肺に入りやすくなります。
これを誤嚥性肺炎と言い、歯周病細菌が肺に入ってしまうと、肺炎になる可能性が非常に高くなります。肺炎予防をするためにも歯周病治療は大切です。
バイオフィルムは、歯磨きとフロスだけでは除去することができません。
歯周病を予防するためには、 PMTCも受けることが重要です。
PMTCでバイオフィルムを除去する
バイオフィルムは、簡単に言うと、歯磨きとフロスだけでは除去できない強力な汚れです。
このバイオフィルムを除去するためには、歯科医院で定期的にPMTCを受ける必要があります。
PMTCは、バイオフィルムや歯石を除去するだけでなく、歯の付着した着色も除去することができるので、歯のもともとの自然な白さが戻ります。PMTCをすると、歯の表面がとてもツルツルになるので口の中が爽快になり、口臭の予防にもつながります。
PMTCのその他のメリット
歯の審美性が高められる
PMTCは、落ちにくい汚れや着色を落とすことができるので、歯のくすみもキレイにすることができます。
もともとある歯本来の自然な白さを取り戻すことができます。
矯正中や入れ歯の人でもきれいになる
矯正中で細かいところまで歯が磨けない方や、入れ歯を入れており汚れが溜まりやすく磨きにくい部分も、PMTCならきれいにすることができます。
PMTCの流れ
PMTCは以下のような流れで行われます。処置時間は1時間弱ぐらいです。
最初に口の中を検査し、その後に、汚れの付着部位を分かりやすくするため、汚れにだけ反応する染料を歯につけます。
超音波の機械で歯石を除去しながら、さらに、一分間に1万回転する電動歯ブラシのような機械で歯面を清掃していきます。
バイオフィルム(ベタベタした細菌のかたまり)を剥がして、歯の表面をツルツルに仕上げます。
歯と歯の間は歯ブラシの毛先が届きにくく、虫歯ができたり、歯周病進行するケースが多いので、入念に行います。
セルフケアでは低濃度のフッ素が配合された歯磨剤を使用し、歯科ではPMTCの締めとして高濃度のフッ素を塗ることによって歯質の強化を促します。
小さな虫歯になりかけている部分は、フッ素を塗布するだけで進行が止まることもあります。
最適なPMTCの頻度
最適なPMTCの頻度は、その方の歯磨きの仕方や歯並びの状態、嗜好品摂取の頻度などにも左右されます。
一概には言えませんが、基本的に半年に一度PMTCを行うことをおすすめします。
自分に適した頻度で行うと良いでしょう。