こんにちは!不動前ステーション歯科・矯正歯科の小林です^ ^
本日も前回に引き続き、口腔粘膜に発症する病変についてお話しします。
本日は赤い斑点やびらんを主徴とする疾患についてお話ししていきます。
〈紅板症〉
紅斑症、紅色肥厚症ともいいます。
以前まで前がん病変とされていましたが、最近では潜在的悪性疾患と呼ばれています。
鮮紅色のビロード状、斑状の肥厚性病変です。
この疾患の約50はがん化するといわれており、初診時に初期がんになっていることも多く見受けられます。
①症状:境界が比較的明瞭な鮮紅色ビロード様の斑状病変で、舌・頬粘膜・口蓋に多く現れます。びらん型の早期浸潤がんや上皮内がんとの鑑別が重要です。顆粒状に表面が隆起している場合や、白斑部が混在している場合はがんの可能性が高いです。扁平苔癬、紅斑性(萎縮性)カンジダ症と鑑別します。
②治療:周囲健常組織を含めた切除手術、小さい病変では術前の病理組織検査をせずに切除生検を行い、手術標本の病理組織検査で悪性の有無を確認します。
〈扁平苔癬〉
口腔粘膜のほか、外陰部粘膜、食道粘膜、皮膚にも生じる慢性炎症性角化病変です。
明らかな原因は不明ですが、薬物や歯科金属アレルギー、ストレスなどが考えられています。
また、自己免疫疾患に伴う一つの症状との報告があります。
口腔カンジダ症を合併することがあります。
①症状:口腔粘膜の灼熱感および接触痛のために自覚します。臨床症状は多彩でありますが、白色の網状、びらん状、萎縮状に大別されます。40歳以上の女性に好発し、両側の頬粘膜に見られることが多くあります。
②治療:病理組織検査で確定診断をします。自然治癒しにくい難治性粘膜疾患でありますが、ごくまれにがん化するという報告があるので、長期観察が必要です。対症療法としてステロイド含有口腔用軟膏の塗布が行われますが、根治的治療ではありません。検査において歯科金属アレルギーが診断された場合は、原因金属の除去が必要になります。
〈多形滲出性紅斑〉
口腔、眼、鼻、外陰部などの粘膜に、紅斑、丘疹、水疱、びらん、潰瘍など多彩な症状が発現する急性非化膿性病変です。原因は不明で、抗菌薬や消炎鎮痛薬などの薬剤の副作用、またはウイルスやマイコプラズマ感染が誘因となり免疫反応が起こるためと言われています。
①症状:初期症状は口腔粘膜の浮腫を伴う紅斑発現が多く、びらん、潰瘍へと移行します。潰瘍性出血や血痂皮が形成されます。軽症型では口腔粘膜に限局しますが、重症型では発熱、頭痛、関節痛、嚥下痛、下痢、腹痛などを伴います。
②治療:ステロイド薬大量療法と感染予防、原因があればそれを除去します。
〈薬疹〉
投与された薬剤に対する生体の不都合な反応が皮膚・粘膜に発現したものです。
①症状:固定薬疹は同一薬剤投与により、毎回皮膚の同一部位に炎症反応を起こします。比較的境界明瞭な円形または類円形の浮腫性紅斑としてみられます。薬疹や重症型になると多形滲出性紅斑、スティーブン・ジョンソン症候群、中毒性表皮壊死症を引き起こし、死亡する場合もあります。
②原因:消炎鎮痛薬、抗菌薬による場合が多いですが、抗悪性腫瘍薬の用量に関係のないアレルギー性のものと、過剰投与で起こる中毒性のものがあります。どちらも薬理学的副作用と生体側の特異体質が関係します。
③治療:原因となった薬剤の投与を中止し、症状の程度により皮膚科を受診します。薬疹が軽症であれば抗ヒスタミン薬軟膏の塗布を行います。